007に憧れた少年は、いま
なぜ探偵になったのか、と訊かれることがある。
理由は人によって様々なのだが、
ウチの探偵の中には、
「子供のころ007に憧れていたけど(成長して)日本でスパイは無理だと解ったので、一番近いのは探偵かなと思った」と語る者がいる。
なんだそれ、と笑うのはたやすいが、
人が仕事を選ぶきっかけなんて結局はみな、
憧れやちょっとした興味、という言葉に集約できるのではなかろうか。
似たような理由を持つ探偵は、
口にするのが気恥ずかしいだけで、きっと少なくはないはずだ。
なったきっかけが何であれ、探偵たちの多くに共通する性質に、
ガジェット好き、というのがあると思う。
くだんの彼も先日、
監視用の最新小型カメラを購入して子供のように喜び、
…と思えば、今度はそれを嬉々としてバラし、
対象者に気づかれぬよう映像をとらえるべく工作して
時に家電に、時にインテリアに、時にガーデニング用品に、
(あるいはあんなものの中にまで!) 巧みにレンズを潜ませる。
007映画でいうなら、
ジェームズ・ボンド自ら Q※の役割も務めているようなものだ。
なぜ探偵になったのか。
は、人それぞれだが、
ひとつだけ言える。
探偵業は、
何かにマニアックなこだわりがあり、かつ、
一芸もっているタイプの人間が、
向く。
※Q(キュー):007映画における、秘密道具研究開発部署の長の呼称