闇バイトは、普通の家庭から始まる
最近、素行調査で明らかに増えている依頼がある。
「子どもが闇バイトに関わっていないか確認したい」
という内容だ。
最近の闇バイトは巧妙だ。
「簡単」「高収入」「即日払い」
そんな言葉で募集をかけ、応募時に送らせた個人情報を握る。
そして逃げられなくする。
本人にとっては軽い気持ちのバイトでも、
気づいた時には脅迫され、犯罪の実行役にされているケースも珍しくない。
重要なのは、
“うちの子に限って”で判断しないことだ。
感情ではなく、事実を見る。
違和感があるなら、まず現状を確認する。
我が子が逮捕されてからでは遅い。
それもまた、親にできる現実的な守り方の一つだ。
SNS時代の情報漏洩は、内部から始まる
SNSの投稿が、西日本シティ銀行を炎上させた。
アプリはBeReal。
“リアルを共有する”という名のもと、2分以内の投稿を強いる仕組みのSNSだ。
そこに映っていたのは、ただのオフィス風景じゃない。
貸出金や預金残高と見られる数値、ホワイトボードの業績目標、デスク上の書類、PC画面の断片、そして顧客の氏名。
金融機関にとって、これらは“命”に等しい情報だ。
外部からのハッキングも脅威だ。
だが現実には、もっと厄介な敵がいる。
内部だ。
軽率な投稿、セキュリティ意識の欠如、規定の形骸化。
これらは“内部リスク”として蓄積される。
「ちょっとくらい」
「誰も見てない」
「友達だけだから」
その油断が引き金になる。
問題は個人のモラルだけじゃない。
組織の管理が機能しているかが問われる。
必要なのは、デジタルフォレンジック調査と社員動向調査だ。
削除された投稿や端末内データ、アクセスログを洗い出し、消えた痕跡を引きずり出す。
同時に、社員の行動やSNS利用、規定遵守の実態を可視化する。
問題が起きてからでは遅い。
企業にとって最大の資産は信用だ。
一枚の投稿が、その信用を削る。
そして削られた信用は、簡単には戻らない。
退職代行の逮捕から見えた、探偵が絶対に越えてはいけない一線
先日、退職代行サービスを運営していた会社の社長らが、
弁護士法違反――いわゆる非弁活動の周旋の疑いで逮捕された。

利用者は累計4万人超。
今どき、珍しくもないサービスだ。
だが、その裏側で一線を越えていた。
理由はシンプルだ。
弁護士資格のない者が、報酬目的で法律事務の仲介をした。
それだけの話だ。
退職交渉は、立派な「法律事務」にあたる。
それを弁護士に回し、見返りを受け取った。
この構図がアウトだった。
そしてこの問題は、
探偵業界に身を置く我々にとっても、決して他人事ではない。
「提携弁護士がいます」
探偵業者のサイトでは、よく見かける文言だ。
だが、この一言の裏には、
違法・合法の境界線がはっきり存在している。
まず、探偵が弁護士を仲介し、
その見返りに、弁護士から金を受け取ること。
議論の余地はない。
退職代行の会社と同じく、弁護士法違反だ。
仲介した探偵側だけでなく、
金を支払った弁護士側にも、罰則が及ぶ可能性がある。
次に、こういった文言を目にしたことはないだろうか
「調査から弁護士交渉まで全部込みで〇〇円」
聞こえはいい。
だが、足元はかなり危うい。
探偵と弁護士は、本来、別契約・別業務だ。
探偵が窓口となり、弁護士費用まで一括で扱えば、
実質的に「法律事務を仕切っている」と見られても文句は言えない。
非弁行為と判断されるリスクは、常につきまとう。
楽な売り方ほど、地面はぬかるんでいる。
では、合法な弁護士との提携とはなんだろうか?
それは、調査の結果、法的対応が必要になった場合に
「必要であれば、こういう弁護士もいます」
と、依頼者に無償で情報を渡すことだ。
金は一切絡まない。
契約は、依頼者と弁護士が直接結ぶ。
ここまでなら問題はない。
あくまで“紹介”であって、“仲介”ではない。
探偵の仕事とは何か。
答えは一つ。
事実を掘ることだ。
だが、金儲けのためなのか
一線を踏み越えてしまう業者がいる。
例えば――
「金を貸した相手が逃げた
見つけて、金を取り返してほしい」
という依頼が来たとする。
依頼者の気持ちは分かる。
しかし、探偵にできるのは、
所在を突き止めるところまでだ。
現住所、勤務先、行動実態を明らかにする。
――ここまでが仕事だ。
「うちで回収します」
そんなことを言う探偵がいたら、即座に疑え。
仮に依頼してしまうと、
最悪の場合、依頼者まで弁護士法違反や
恐喝・傷害などの共犯と見なされる可能性がある。
回収交渉は、本人か弁護士の仕事だ。
パワハラの相談も同じだ。
「証拠を取って、謝罪と慰謝料を請求したい」
この依頼で探偵ができるのは、
録音、撮影、行動記録、報告書の作成。
証拠を形にするところまでだ。
探偵は、戦う役ではない。
RPGで例えるなら、武器職人だ。
だから、戦えるのは
主人公である依頼者か、
戦士として前に立てる弁護士だ。
探偵が作った武器を、どう使うか。
敵をどう攻め、依頼者をどう守るか。
それを決め、実行するのが弁護士の仕事だ。
法律は、情では動かない。
だが、法の内側で集められた証拠は、
あなたを守る力になる。
だからこそ、
「何でもやります」と言う探偵ではなく
「できること・できないこと」をはっきり言う探偵を選んでほしい。
それが、目的達成への確実な方法だ。
ストーカー対策のために伝えたいこと
ストーカーによる痛ましい事件の報道が、後を絶たない。
尊い命が失われたという事実は、
どれほど言葉を選んでも、軽く扱えるものではない。
近年、現場を見ていて実感するのは、
ストーカー行為が年々、巧妙化しているということだ。

GPS機器や紛失防止タグなど、
位置情報を利用した手口が確実に増えている。
本人に直接接触せず、
生活圏だけを把握する。
そういうやり方だ。
過度に疑い、怯える必要はない。
だが、対策を知っておくことは、確実な防御になる。
まず、位置情報は自分の命綱だと思ってほしい。
ストーカーにとって、
一番欲しいものは「あなたの現在地」だ。
それさえ握られれば、
待ち伏せも、奇襲も、やりたい放題になる。
Instagramをはじめとした、
位置情報を共有するアプリには注意してほしい。
元恋人、気になる相手、ただの友人。
「まあいいか」で位置情報を共有する行為は、
合鍵をばらまくのと同じだ。
関係がこじれた相手とは、即座に解除していい。
そこに余韻も、情も、必要ない。
SNSに投稿する写真にも気を配ってほしい。
店の看板、駅名、窓から見える景色。
背景に写り込むものは、
すべてあなたの居場所を示すヒントになる。
出先で投稿するなら、時間を置くことだ。
リアルタイムで居場所を晒す行為は、
自分を狩場に差し出すようなものだ。
次に、プレゼントは「トロイの木馬」だと思ってほしい。
善意で包まれた贈り物ほど、
何かを仕込むには都合がいい。
ぬいぐるみ、キーホルダー、小型のガジェット。
不自然な重さやふくらみ
不自然な縫い目はないだろうか。
誰から来たのか、
いつから手元にあるのか説明できない物は、
一度すべて「疑いの棚」に上げてほしい。
電子機器のプレゼントも同様だ。
初期設定を他人に任せた時点で、
その機器は乗っ取られている可能性がある。
自分で初期化し、
自分のアカウントだけでセットアップする。
それが最低限のラインだ。
最後になるが
ストーカーは、怪物の顔をしていない。
職場の同僚かもしれない。
元恋人かもしれない。
昨日まで笑って話していた、
ごく普通の誰かかもしれない。
だからこそ、
「信じたい気持ち」と「身を守る判断」は、
切り離して持っておく必要がある。
優しさは、捨てなくていい。
ただし、その前に、
自身の安全を確保してほしい。
一介の探偵として、
そう願っている。
半導体を感知できる非線形結合検出器を導入
電子機器は、止まることなく進化を続けている。
盗聴器や盗撮機器は極限まで小型化され、電波を発しない機器も増えた。
紛失防止タグの悪用も後を絶たない。
昨年11月には、こうした状況を背景に
ストーカー規制法が改正される流れにまで至っている。
高性能化した盗聴器やGPS機器は、
従来の探索機材では発見が困難となるケースもある。
そこでアイヴィ・サービスでは、半導体そのものを感知できる
NLJD(ノンリニア・ジャンクション・ディテクター)と呼ばれる
非線形結合検出器を国外より導入した。

この機材は“回路”そのものを検出できるため、
電源が入っていない電子機器であっても探索が可能だ。
軍事・防衛分野では、テロ対策やスパイ活動の防止に用いられる程の性能を持つ。
だが、どれほど高性能な機材を揃えようと
それだけで結果が出るほど現場は甘くない。
“勘”とは偶然ではない。
知識と経験の積み重ねによってのみ構築されるものだ。
新人調査員も増えた。
調査の合間を縫い、基礎から徹底的に叩き込む研修を続けている。
道具に使われるな。
道具を使いこなせ。
それが、現場に立つ探偵の最低条件だ。
世界中の探偵、バンクーバーに集う 世界探偵協会:WAD 第98回カンファレンス

探偵は、むろん世界中にいる。
しかし、業績や信頼性を認められている探偵業者はわずかであり、
その「認められた」証の1つとなるのが、
1925年創立の、伝統ある世界探偵協会:WAD
(The World Association of Detectives)への加盟である。
非常に厳しい入会基準を持つ同協会に加盟できるのは
各国でもトップクラスの探偵業者のみ。
そんな面々が世界各国から集う、第98回の総会が
今月3日~8日、カナダ・バンクーバーで開催された。


我が社からも6名が参加し(通訳含む)、講義や懇親会に参加。
各国の同業者たちとふれあい、情報交換をする中で感じたのは、
国ごとに、探偵を取り巻く状況や法律などに多少の違いはあれど、
扱うのは同じく「人」の心から生じた疑念や不安であるという点や
みな同じくその道のプロフェッショナル(同志)なのだという
安心感と連帯感。
さらに、“ It's a small world ” …
世界はいまや、こんなにも近い という実感だ。
数年を待たずして、きっと我々のフィールドは世界中に広がる。
そのとき、これほどの精鋭たちが、仲間が、各国にいる。
心強く思うと同時に抱いたのは、自らも、
その一員として恥じぬよう在らねばならぬ、という想い。
秋風 吹き渡るバンクーバーの街角で
探偵は、身も心も引き締まるのを自覚する。
007に憧れた少年は、いま
なぜ探偵になったのか、と訊かれることがある。
理由は人によって様々なのだが、
ウチの探偵の中には、
「子供のころ007に憧れていたけど(成長して)日本でスパイは無理だと解ったので、一番近いのは探偵かなと思った」と語る者がいる。
なんだそれ、と笑うのはたやすいが、
人が仕事を選ぶきっかけなんて結局はみな、
憧れやちょっとした興味、という言葉に集約できるのではなかろうか。
似たような理由を持つ探偵は、
口にするのが気恥ずかしいだけで、きっと少なくはないはずだ。

なったきっかけが何であれ、探偵たちの多くに共通する性質に、
ガジェット好き、というのがあると思う。
くだんの彼も先日、
監視用の最新小型カメラを購入して子供のように喜び、
…と思えば、今度はそれを嬉々としてバラし、
対象者に気づかれぬよう映像をとらえるべく工作して
時に家電に、時にインテリアに、時にガーデニング用品に、
(あるいはあんなものの中にまで!) 巧みにレンズを潜ませる。
007映画でいうなら、
ジェームズ・ボンド自ら Q※の役割も務めているようなものだ。
なぜ探偵になったのか。
は、人それぞれだが、
ひとつだけ言える。
探偵業は、
何かにマニアックなこだわりがあり、かつ、
一芸もっているタイプの人間が、
向く。
※Q(キュー):007映画における、秘密道具研究開発部署の長の呼称