アイヴィ・サービス探偵日誌

全国の探偵事務所アイヴィ・サービスの探偵たちの日常をお届けします。

白髪の紳士

見習い探偵の日々勉強

 

とある昼下がりの東京駅、東北・上越新幹線ホームは平日にも関わらず賑わう中、私は仙台へ戻るため自分が乗る新幹線を待っていた。周りを見ればディズニーランドの袋を持った家族、旅行中と思われる老夫婦、サラリーマン等多種多様だ。その中でひと際目についたのが白髪の男性であった。年は70歳前後、スーツにコートを着て白髪の髪をオールバックにした紳士の鏡とも言える男性であった。やがて自分が乗る新幹線がホームに到着するが、折り返し運転のため車内清掃のアナウンスが流れた。清掃員が見事な手さばきで車内を清掃しているのが目に入る。ふと紳士を見るとやや笑みを浮かべながら窓越しに見える清掃員を見つめている。5分程で清掃が終わると、清掃員たちは乗車口付近に一列に並び、乗車を待っていた乗客に向かって無言で一礼をした。その時、50名近く居たであろう乗客の中で、唯一、清掃員の一礼に向かって深々と礼をした人物がいた。そう、あの白髪の紳士であった。紳士は何のためらいもなく深々と頭を下げ、笑顔で清掃員を見送った。私はとたんに自分が恥ずかしくなり、ただ一人だけ頭を下げた紳士が物凄くかっこよく見え、人間として素晴らしい人であると感じた。清掃員にとってはお返しの礼は皆無であると思っている方が多いと思うが、ただ頭を下げるだけでも清掃員にとってはうれしい事ではないかと感じ、そんな簡単な事も出来なかった自分が恥ずかしくて、悔しくて仙台に着くまでずっとその事を考えてた。

 

 

実際には簡単な挨拶かもしれないが、いざ大勢の前でただ一人挨拶する事はとても勇気のいる事である。しかし、日頃から挨拶を行っている人からみればとても簡単な事の様な気がする。私も紳士を見習って、まずは家族、会社のみんなへ進んで挨拶することを考え会社に着いたのであった。